知っておきたい~病気と治療の基礎知識(弘前市)

こんにちは。
青森県弘前市の社会保険労務士、香取です。

本日は、知っておきたい~病気と治療の基礎知識について説明します。

◎がん

・近年、がんの平均入院日数は短くなり、通院して治療を受け、治療の副作用や症状等をコントロールしながら仕事をしている人が増えています。がん治療の方法や治療に伴う症状などは、人によってさまざまであり、特に個人に応じた配慮が必要です。

◇治療を踏まえた対応

①手術
・がん組織や周りのリンパ節を取り除きます。

→手術前に入院期間や手術後に出やすい合併症、制限すべき動作などを確認します。およその職場復帰までの期間を見積もることができますが、手術後の経過は手術前の見込みと異なる可能性もあります。

②化学療法
・抗がん剤によりがん細胞の増殖を防ぎます。1~2週間程度の周期で行われます。

→副作用により周期的に倦怠感や免疫力の低下および脱毛など、体調が変化します。いつごろどのような症状が出やすいか推測ができるため、副作用、内容、程度、治療スケジュール変更の有無などの情報を本人から事業者へ提供することが望まれます。

③放射線治療
・放射線を当てて、がん細胞を消滅させたり少なくしたりします。1回の治療時間は10~20分程度で、基本的に毎日(月~金)の治療を数週間にわたって行います。

→通院による疲労に加えて、治療による倦怠感が生じることがあります。症状は個人差が大きく、治療スケジュールを本人から事業者へ提供することが望まれます。

◎脳卒中

・脳卒中は、脳の血管に障害がおきることで生じる病気の総称で、「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」などが含まれます。
・医療の進歩に伴って、死亡率は低下し、発症後の適切な治療とリハビリテーションにより、就労世代などの若い患者においては、約7割が介助を必要としない状態まで回復しています。

◇再発予防、治療のための配慮

・病状が安定したあとも、再発防止のために継続した服薬や、定期的な通院等が必要です。

→通院頻度や服薬に伴い出やすい副作用の内容等の情報を労働者から事業者へ提供することが望まれます。

◇障害に応じた配慮

・脳卒中の発症後、手足のまひや言語の障害が残る場合があります。一般的に運動機能は発症からおよそ3~6か月までの間に回復し、それ以降変化が見られなくなります。

◇主な後遺症

●痛みやしびれ(慢性疼痛など)
●記憶力の低下、注意力の低下(高次脳機能障害)

→障害によって、一見してわかりづらいものや、作業転換等の措置が必要なものがあります。周囲の理解と協力を得るためにも、本人の同意を得て、上司・同僚と情報を共有しながら、理解を得られるよう支援を進めるとよいでしょう。

◎肝疾患

・肝疾患には、次のような疾患があり、勤労世代の約15%が肝機能検査において異常が認められます。

①ウイルス性肝炎
②脂肪性肝疾患(肥満、糖尿病、飲酒などによる脂肪蓄積)
③免疫の異常による疾患

◇肝疾患の治療

・肝疾患の場合は、病気があまり進行しておらず、症状が出ていない段階であっても、通院による治療、経過観察が必要な場合があります。
・治療を中断すると、疾病や症状が急激に悪化する場合があります。

●飲酒や肥満などはリスクとなるため、過度な安静は不要であり、適度な運動と食事療法が有効。
●疾病が進行すると、倦怠感や、食欲不振により体力が低下することもある。身体的な負荷がある仕事や、車の運転など危険な作業を控える措置も必要。

◇肝疾患について正しい理解を

・慢性化するB型、C型肝炎ウイルスは、血液を介して感染するものです。そのため、会話や握手、食事をともにすることなど、通常の日常生活や仕事の範囲で感染することはほとんどありません。
・感染のリスクについて正しく理解し、職場の理解と協力が得られるようにしましょう。

◇コラム

●病人は働かせてはいけない?
安全配慮義務と治療と仕事の両立支援

・労働安全衛生規則61条第1項第2号では、事業者は「心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく憎悪するおそれのあるものにかかった者」については、その就業を禁止しなければならないとしています。事業者には、労働者が安全で健康に働くことができるよう配慮する義務(安全配慮義務、労働契約法第5条)があり、当然のことと言えます。

・しかし、就業を禁止する前に、その労働者の疾病の状況についての産業医等の意見を勘案し、できるだけ配置転換や作業時間の短縮などの必要な措置を講じて就業が続けられるようにすることが前提です。それでもなお、やむを得ない場合に限り就労を禁止するという趣旨であり、「病気の人を働かせてはいけない」ということではないことに注意が必要です。

・同様に、労働安全衛生法でも、事業者による労働者の健康確保対策に関する規定があります。健康診断の実施や医師の意見により、必要な場合は配置転換や作業時間の短縮などの就業上の措置を義務付けています。これは、労働者が、仕事により、病気(負傷を含む)になったり、病気が憎悪したりすることの防止を事業者に求めているものです。さらに、同法では、事業者は、その就業に当たって、中高年齢者等の特に配慮を必要とする者については、これらの者の心身の条件に応じて適正な配置を行うように努めなければならないこととされています。

・これらを踏まえれば、事業者が病気の労働者を就労させると判断した場合は、業務により病気が憎悪しないよう、治療と仕事の両立のために必要となる一定の就業上の措置や治療に対する配慮を行うことは、労働者の健康確保対策として位置づけられ、事業者の取り組むべき責任といえます。

本日はここまでとします。次回に続きます。
またのご訪問お待ちしております。

2019/4/23

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