業際について~労働保険(年度更新)社会保険(算定基礎届)について/弘前市

私は社会保険労務士として業務を行うと同時に、行政書士としても登録しております。いわゆる「士業」と呼ばれる職業には、それぞれ法律で定められた業務の範囲、いわゆる「業際(ぎょうさい)」があります。
この業際を正しく理解し、適切に業務を行うことは、お客様の信頼に応えるためにも非常に重要です。今回は、社会保険労務士と他の士業(特に税理士・行政書士)との関係において、誤解されがちな点や注意すべき点を解説いたします。
士業には「独占業務」がある
士業の中には、それぞれの資格者しか取り扱えない「独占業務」が法律で定められています。たとえば、弁護士は訴訟代理、税理士は税務申告、社会保険労務士は労働社会保険の手続きなどです。
他の士業がこれらの独占業務を行うことは原則として違法であり、たとえ悪意がなかったとしても、結果的に依頼者に不利益を与えてしまう恐れがあります。
社労士と税理士の業際について
社労士と税理士との間で、特によく問題となるのが「税理士の付随業務」に関する解釈です。
税理士法第2条第1項では、税理士の業務として「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」が定められています。そして、この条文に基づき、税理士法人が社会保険や労働保険に関する事務を付随業務として行えるかどうかが論点になります。
税理士が行える「付随業務」の範囲は限定的
平成14年6月6日、全国社会保険労務士会連合会と日本税理士会連合会との間で取り交わされた「確認書」によれば、税理士(または税理士法人)が行える付随業務は、「租税債務の確定に必要な事務」に限られます。
したがって、以下のような社労士の独占業務は、税理士であっても行うことはできません。
税理士の付随業務に含まれない代表的な社労士業務
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1.労働保険の年度更新(申告・納付)
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2.社会保険の算定基礎届や月額変更届の作成
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3.雇用保険・社会保険の資格取得・喪失届の提出
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4.被扶養者の異動・追加に関する届出
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5.保険給付に関する申請(労災・傷病手当金など)
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6.助成金や雇用保険二事業に関する申請
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7.就業規則の作成・変更
これらの業務は、社会保険労務士法第2条に基づく社労士の独占業務であり、社労士または社労士法人にしか取り扱うことができません。
社労士と行政書士の業際について
次によく混同されるのが、行政書士と社労士の業際です。
行政書士は「官公署に提出する書類の作成および提出手続の代理」を業務としていますが、労働社会保険諸法令に基づく届出は、原則として社労士の独占業務とされています。
昭和55年以前の経過措置について
行政書士法の一部改正(昭和55年法律第45号)により、昭和55年9月1日以前から継続して行政書士として登録されていた方には、社労士法第2条第1項第1号および第2号の業務(社会保険手続など)を、引き続き行えるという経過措置が設けられました。
ただし、この措置には明確な制限があります:
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・昭和55年以降に登録した行政書士は対象外
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・経過措置対象者であっても、それ以降に社労士法に加えられた新たな業務は行えない
つまり、すべての行政書士が社会保険手続きを業として行えるわけではありません。
複数資格の取得と誠実な対応
このように、士業にはそれぞれの専門分野があり、その枠を越えて業務を行うことは法的にも倫理的にも問題があります。
だからこそ、実際には複数の資格を取得して登録している専門家も増えています。たとえば、私も社会保険労務士と行政書士の両方に登録しており、それぞれの資格に基づいて適切な業務を行っています。
万が一、他士業の業務範囲であることを知りながら業務を行えば、それは明確な法律違反です。知らずに行った場合でも、免責されることはありません。
まとめ:お客様のために正しい資格で対応を
士業が自分の業務範囲を正しく理解し、それを超えない範囲で誠実に業務を行うことは、お客様に対する最低限の責任です。
お客様から見れば「誰に頼めばいいのか分からない」ことも多い分野ですが、それぞれの専門家が自分の範囲内で適切に対応することが、最終的にはお客様の利益と安心につながります。
必要に応じて、適切な資格を持つ士業と連携しながら、丁寧で正確な手続きを行うことが、私たち士業に求められている姿勢ではないでしょうか。
※本記事は2025年6月現在の法令・通達・業界通念に基づいて執筆しています。
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