がんで障害年金もらえる?青森県・青森市

がんで障害年金はもらえる?受給のポイントを徹底解説!

1. はじめに

がんは、医療の進歩によって「治る病気」になりつつありますが、手術や抗がん剤治療、放射線治療による副作用、再発の不安など、長期にわたる療養や生活の制限を強いられる病気でもあります。

このようながんの治療やその後の生活において、経済的な支えとなる制度のひとつが「障害年金」です。障害年金は、一定の障害状態にある方が受給できる公的年金制度ですが、「がん=障害」とすぐに結びつかない方も多く、制度の内容がよく分からないという声も多く聞かれます。

本記事では、がんと診断された方、治療中または治療後の方が、障害年金を受給できるのかどうか、どのような条件で認定されるのかなど、申請に必要な知識をわかりやすく解説します。記事の最後には、実際の受給事例や申請の流れについても紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。


2. 障害年金とは?

障害年金とは、病気やけがにより生活や仕事が制限される状態になった場合に支給される、国の公的年金制度のひとつです。原則として、20歳から60歳までの間に初診日がある場合が対象となり、老齢年金とは別に、障害の状態に応じて支給されます。

障害年金には以下の3つの種類があります。

  • ・障害基礎年金:国民年金加入者が対象(主に自営業者や学生など)
  • ・障害厚生年金:厚生年金加入者が対象(会社員・公務員など)
  • ・障害共済年金:共済年金加入者が対象(現在は厚生年金に統合)

障害年金の支給要件は次の3つです。

  1. 1.初診日要件:初診日が年金制度に加入している期間であること
  2. 2.保険料納付要件:一定期間、年金保険料を納めていること
  3. 3.障害認定日要件:初診日から原則1年6か月後、またはそれ以前に障害の状態が一定の基準に達していること

がんにおいては、初診日から1年6か月経過しても症状が改善せず、労働や日常生活に支障がある場合に、障害年金の対象となることがあります。


3. がんで障害年金を受給できるケースとは?

がんといっても、部位や進行度、治療内容、副作用、後遺症の程度は人によって大きく異なります。障害年金は「がんという病名」だけではなく、「日常生活や仕事にどれだけ支障があるか」という実際の状態を基準に審査されます。

以下のようなケースでは、障害年金の対象となる可能性があります。

  • ・治療の影響で食事が摂れず、栄養補助が必要
  • ・長期間の抗がん剤治療で体力が著しく低下
  • ・再発の恐れがあり、常に治療を継続している
  • ・肺がんなどで呼吸機能が著しく低下している
  • ・骨転移により歩行困難になった
  • ・排泄障害やストーマ管理が必要
  • ・うつ症状や認知機能の低下が生じている

特に「身体機能に直接的な障害がある」「治療による著しい制限がある」場合に、認定の可能性が高まります。


4. がんの障害認定基準について

がんによる障害年金の認定基準は、日本年金機構が定める「障害認定基準」に基づきます。がんは、特定の臓器に対する障害認定基準だけでなく、「その他の障害」として総合的に判断されることもあります。

4-1 臓器別の障害認定基準(例)

臓器 障害の状態 該当する基準
呼吸器(肺がんなど) 呼吸困難、酸素吸入が必要 呼吸器疾患による障害等級
消化器(胃・腸など) 栄養障害、ストーマ管理 消化器障害の等級
泌尿器(腎臓・膀胱など) 尿路変更、人工透析 泌尿器疾患の基準
血液・骨髄 貧血・出血傾向・免疫低下 血液疾患の基準
精神・神経 抗がん剤の副作用によるうつ病や認知障害 精神疾患・高次脳機能障害の基準

4-2 総合的判断(その他の障害)

がんの場合、「がんそのものによる障害」ではなく、「治療や後遺症による生活機能の制限」に焦点が当てられます。たとえば、以下のような状態です。

  • ・寝たきりまたはそれに近い状態
  • ・日常生活に常時介助が必要
  • ・通院頻度が高く、就労が著しく制限されている

このような状態が続いている場合、3級以上に認定される可能性があります。


5. 障害年金の等級と支給額(がんの場合)

障害年金は、障害の程度に応じて1級、2級、3級に区分され、それぞれ支給額が異なります。がんにおいても、障害の状態に応じて等級が決定されます。

5-1 障害基礎年金(国民年金加入者)

  • ・1級:約102万円/年(+子の加算あり)
  • ・2級:約81万円/年(+子の加算あり)

※2024年度時点の支給額

5-2 障害厚生年金(厚生年金加入者)

  • ・1級:報酬比例部分×1.25+配偶者加算
  • ・2級:報酬比例部分+配偶者加算
  • ・3級:最低保障額あり(約61万円/年)

がんでの申請の場合、2級や3級に認定されることが多いですが、生活機能が極端に制限されている場合は1級の可能性もあります。


6. 申請手続きの流れ

がんによる障害年金の申請は、以下のような流れで行われます。

6-1 初診日の確認と証明

障害年金の申請において、最も重要なのが「初診日」です。これは、がんと診断される原因となった症状で最初に医師の診察を受けた日を指します。

たとえば、次のようなケースが考えられます。

  • ・体調不良で内科を受診し、後日精密検査でがんと判明した
  • ・人間ドックで異常が見つかり、病院で精密検査を受けた

初診日の病院に「受診状況等証明書」を依頼する必要があります。

6-2 診断書の取得と必要書類の準備

障害年金の申請には、がんの状態を反映した診断書が必要です。がんの場合は、以下の様式が使われることが一般的です。

  • ・様式第120号の6(その他の障害)
  • ・または臓器別の診断書(例:呼吸器、消化器など)

医師に依頼する際は、「日常生活や仕事への影響を具体的に記載してもらう」ことが重要です。診断書の内容が等級決定に直結するため、申請者の現状が正確に反映されるように準備しましょう。

その他に必要な書類としては以下のものがあります。

  • ・年金請求書
  • ・受診状況等証明書(初診日の病院から)
  • ・病歴・就労状況等申立書
  • ・本人確認書類(マイナンバーカードなど)
  • ・年金手帳または基礎年金番号通知書

7. がんで障害年金を申請する際の注意点

がんによる障害年金の申請では、次のような点に特に注意が必要です。申請の成否を分けるポイントでもありますので、しっかり確認しておきましょう。

7-1 初診日の証明が難しいケースがある

がんの発見は、定期健診や人間ドックなどのスクリーニング検査によって判明することも多く、明確な「発症日」や「初診日」が本人にも分かりづらいことがあります。

このような場合には、以下のような流れで証明できるかを確認します。

  • ・健診の結果→要精密検査の通知→病院の受診
  • ・受診状況等証明書を取得できるか病院に確認
  • ・証明が難しい場合は、カルテや診療録などで代替証明を行う

初診日が証明できないと、申請自体が不可能になることもあるため、申請準備の早い段階で確認・対応することが重要です。

7-2 医師の診断書内容と実際の生活状況に差が出やすい

がんの場合、診察時には元気そうに見えるため、医師が「それほど重い障害ではない」と判断してしまうことがあります。しかし、実際には以下のような状態が続いている方も少なくありません。

  • ・抗がん剤治療後の極度の倦怠感や副作用
  • ・日常生活に著しい支障がある
  • ・就労継続が困難である

このような実情を医師に伝えずに診断書を依頼すると、症状の重さが正確に反映されないことがあります。診断書を依頼する際には、病歴・就労状況等申立書を活用しながら、「生活への影響」を丁寧に説明しましょう。

7-3 初診日と年金制度の加入状況が一致しているかを確認

障害年金の申請では、初診日時点で年金制度に加入しているかどうかが重要です。たとえば、次のような場合には注意が必要です。

  • ・がんと診断された時点では無職で、保険料未納の期間があった
  • ・初診日が20歳前または60歳以降であった
  • ・海外在住などで年金未加入期間がある

このようなケースでは、保険料納付要件を満たさないことがあります。事前に「納付要件」を年金事務所で確認しておくことをおすすめします。


8. がんによる障害年金の受給事例

実際にがんで障害年金を受給できた事例を紹介します。自分の状況と重ね合わせて、申請の可能性を確認する際の参考にしてください。

8-1 事例①:胃がんで摘出手術後、栄養障害が残ったケース(障害厚生年金2級)

40代男性。会社の健康診断で胃がんが見つかり、全摘手術を受けた。その後、体重は激減し、食事量も極端に少なく、低栄養状態が続く。抗がん剤治療の副作用で体力も低下し、就労不能状態に。

→胃切除後の栄養障害が長期にわたり続き、日常生活にも支障があることから、障害厚生年金2級が認定された。

8-2 事例②:乳がん再発により長期治療中のケース(障害基礎年金2級)

50代女性。乳がんの手術後、再発を繰り返し、ホルモン療法や放射線治療を継続中。副作用による慢性疲労、関節痛、うつ症状が重なり、家事もこなせない状態に。

→精神的・身体的な負担が強く、日常生活に著しい制限が認められ、障害基礎年金2級が認定された。

8-3 事例③:肺がんで呼吸機能が低下したケース(障害厚生年金3級)

60代男性。肺がんの治療後も、呼吸機能が大幅に低下し、軽い運動でも息切れが生じる。在宅酸素療法を導入し、屋外の移動が困難になった。

→呼吸器疾患の基準に該当するとして、障害厚生年金3級が認定された。

実際の受給事例

事例1:乳がんで障害厚生年金2級を受給

50代女性。会社員として勤務中、乳がんと診断され、右乳房の全摘出手術を受けました。その後も抗がん剤治療を継続していましたが、副作用により強い倦怠感と食欲不振が続き、就労継続が困難な状態となりました。障害認定日請求を行い、障害厚生年金2級が認定されました。傷病手当金の受給終了と同時に、年金の受給が開始され、生活の支えとなっています。

事例2:肺がんで障害基礎年金1級を受給

40代男性。自営業者で、肺がんと診断され手術を受けましたが、がんが転移し、呼吸困難や日常生活動作の著しい制限が生じました。ステージ4と診断され、治療の継続が必要であったため障害年金を申請。事後重症請求により、障害基礎年金1級が認定されました。診断書では、移動・食事・排泄などにおいて常時介助が必要であることが明記されていました。

事例3:子宮頸がんで障害厚生年金3級を受給

30代女性。会社員として働いていたところ、子宮頸がんと診断され、手術により子宮を全摘出。その後も体力の低下や貧血症状が継続し、フルタイムでの勤務が困難な状態となりました。障害認定日時点では退職しておらず、厚生年金に加入していたため、障害厚生年金3級が認定されました。審査においては、通院中の症状や労働への支障が詳細に記載された診断書が重視されました。

9. まとめ:がんによる障害年金申請は正確な準備が鍵

がんで障害年金を受け取るためには、「病名」よりも「日常生活や就労への影響」が重視されます。そのため、治療の内容や後遺症、生活の支障を正確に伝えられるかがポイントです。

障害年金の申請にあたっては、以下の点をしっかりと押さえておきましょう。

  • ・初診日の確認と証明
  • ・診断書に実態が反映されているか
  • ・年金制度への加入と保険料納付状況
  • ・病歴・就労状況等申立書で実情を丁寧に伝える
  • ・医師とのコミュニケーションを大切に

がん患者の中には、「治療に集中したい」「医師に迷惑をかけたくない」と申請を躊躇する方もいますが、障害年金は生活の支えとなる大切な制度です。

ご自身だけで申請するのが難しいと感じた場合には、障害年金に詳しい社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。


【青森県弘前市で障害年金の申請なら香取社会保険労務士事務所へ】

香取社会保険労務士事務所(青森県弘前市)では、がんをはじめとする障害年金の申請サポートを行っています。

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  • ・医師への診断書依頼サポート
  • ・病歴・就労状況等申立書の作成
  • ・不支給決定後の再申請サポート など

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2025/3/17

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