初診日は自由に決めるものではない!不正受給になるリスク!


障害年金のご相談を受けていると、「初診日を厚生年金に加入していた時期にできませんか?」「最初に病院へ行った日は国民年金の期間ですが、会社に勤めていた頃を初診日にできないでしょうか?」といったご質問をいただくことがあります。
障害年金を受給できるかどうか、また障害基礎年金になるのか障害厚生年金になるのかは、初診日によって大きく左右されます。そのため、少しでも有利な条件で請求したいと考えるお気持ちは理解できます。
しかし、最初にお伝えしたいことがあります。
障害年金の初診日は、受給しやすい日を自由に選んで決めるものではありません。
実際に障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日が基本となります。事実と異なる初診日を申し立てたり、厚生年金加入期間に合わせるために意図的に初診日をずらしたりすることは、絶対にしてはいけません。
当事務所では、初診日を意図的に変更することや、厚生年金加入期間に合わせるための初診日の操作は一切行っておりません。
今回は、障害年金の請求で非常に重要な「初診日」について、間違いやすいポイントと注意点を解説します。
1.そもそも障害年金の初診日とは?
障害年金における初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。
ここで注意していただきたいのは、現在の病名が確定した日が初診日とは限らないということです。
例えば、次のようなケースがあります。
- ・最初は不眠や気分の落ち込みで内科を受診した。
- ・その後、精神科を紹介され、うつ病と診断された。
- ・さらに転院し、現在の医療機関で治療を続けている。
この場合、最初に内科を受診したときの症状と、後に診断されたうつ病との関係などを確認する必要があります。最初に受診した時点で病名が確定していなくても、その受診が現在の障害の原因となった傷病についての診療であれば、初診日となる可能性があります。
また、最初の医療機関と現在の医療機関で病名が異なっていても、同一の傷病と判断される場合があります。
「正式な病名がついたのは後だから、その日を初診日にすればよい」という単純な判断はできません。
2.初診日によって障害年金の種類や受給要件が変わります
初診日が重要なのは、単に書類上の日付を確認するためではありません。
初診日に加入していた年金制度によって、請求できる障害年金の種類が変わるからです。
| 初診日に加入していた制度 | 原則として請求する年金 |
|---|---|
| 国民年金加入中 | 障害基礎年金 |
| 厚生年金加入中 | 障害厚生年金 |
| 20歳前(年金制度に加入していない期間) | 20歳前傷病による障害基礎年金 |
障害基礎年金は原則として1級・2級が対象ですが、障害厚生年金には1級・2級に加えて3級があります。
そのため、初診日が国民年金加入中なのか、厚生年金加入中なのかによって、受給できる可能性や年金額に大きな違いが生じることがあります。
さらに、初診日の前日時点で保険料納付要件を満たしているかどうかも確認されます。
つまり、初診日は次のような重要事項を左右します。
- ・障害基礎年金と障害厚生年金のどちらを請求するのか
- ・3級に該当する場合に障害年金を受給できる可能性があるか
- ・保険料納付要件を満たしているか
- ・障害認定日がいつになるのか
このように、初診日は障害年金の請求における土台となる情報です。
3.厚生年金加入期間に初診日をずらすことはできません
障害年金の相談で、特に注意しなければならないのが、国民年金加入中に初診日があるにもかかわらず、厚生年金加入中に初診日を変更したいというケースです。
例えば、次のような経過を考えてみましょう。
- ・令和2年:国民年金加入中に体調不良で初めて病院を受診
- ・令和4年:会社に就職し、厚生年金に加入
- ・令和5年:症状が悪化し、精神科で治療を開始
- ・令和8年:障害年金の請求を検討
この場合、令和5年に精神科を受診したからといって、当然に令和5年が初診日になるわけではありません。
令和2年の受診と現在の傷病との関係を確認し、同一の傷病と判断されるのであれば、原則として令和2年が初診日となる可能性があります。
「令和2年では障害基礎年金になってしまうので、令和5年の厚生年金加入中を初診日にしたい」という理由だけで初診日を変更することはできません。
初診日は、年金の種類や金額を有利にするために選択できるものではないのです。
事実と異なる初診日を申し立て、その日を前提に請求することは、虚偽の申立てにつながるおそれがあります。故意に事実と異なる内容で請求し、不正に年金を受給した場合には、支給の取消し、返還、加算金、悪質なケースでは刑事責任などの問題に発展する可能性もあります。
当事務所では、このような初診日の意図的な変更には一切対応いたしません。
4.「社会的治癒」で初診日が変わる場合はあります
ここで、誤解していただきたくない重要な制度があります。それが「社会的治癒」です。
社会的治癒とは、医学的に完全に治ったとまではいえない場合であっても、一定期間にわたり症状が安定し、医療を必要とせず、社会生活や就労などを通常どおり行っていた実態がある場合に、社会保険上、治癒に準じて取り扱う考え方です。
例えば、次のような経過です。
- ・以前、うつ病で医療機関を受診していた。
- ・その後、症状が改善し、長期間にわたり通院や服薬を必要としない状態になった。
- ・フルタイムで勤務し、日常生活も支障なく送っていた。
- ・数年後、再び症状が現れ、医療機関を受診した。
このような場合、過去の傷病と現在の傷病との関係や、症状が安定していた期間の生活・就労状況などを具体的に検討したうえで、社会的治癒が認められる可能性があります。
社会的治癒が認められれば、再発後の受診日を新たな初診日として取り扱える場合があります。その結果、再発後の初診日に加入していた年金制度を前提に障害年金を請求できる可能性もあります。
ただし、通院していない期間があるというだけで、社会的治癒が認められるわけではありません。
例えば、次のような事情を総合的に確認する必要があります。
- ・通院を中断した理由
- ・その期間の症状や体調
- ・服薬の有無
- ・医師による治療や経過観察の必要性
- ・就労状況や勤務時間、仕事の内容
- ・仕事を継続できていたか
- ・日常生活をどの程度自立して送れていたか
- ・家族などからの援助の有無
- ・再発時の症状や、過去の傷病との医学的な関係
社会的治癒は、初診日を有利な時期に動かすための制度ではありません。実際に治癒に準じる状態であったと評価できるかどうかを、具体的な事実に基づいて判断するものです。
5.当事務所では社会的治癒を慎重に判断します
当事務所では、社会的治癒に該当する可能性があるご相談について、最初から「社会的治癒を使えば障害厚生年金を請求できる」といった安易な判断はいたしません。
まずは、ご本人から詳しくお話を伺い、発症から現在までの受診歴、治療内容、症状の変化、仕事や日常生活の状況などを時系列で整理します。
そのうえで、社会保険労務士として、社会的治癒を主張することが妥当なのか、過去の初診日を前提に請求すべきなのかを検討します。
必要に応じて、当時の勤務状況が分かる資料、給与明細、源泉徴収票、雇用関係の資料、医療機関の記録など、客観的な資料の確認も行います。
大切なのは、社会的治癒を主張すること自体ではなく、その主張を裏付ける事実と資料があるかどうかです。
社会的治癒が認められる可能性が低いと判断した場合には、その旨を率直にお伝えします。受給できる可能性を高めるために、事実と異なる説明をしたり、都合のよい初診日を作ったりすることはありません。
6.初診日を間違えると、障害年金の請求そのものが難しくなることがあります
初診日を誤って判断したまま請求手続きを進めると、後から問題が判明し、書類の取り直しや申立内容の修正が必要になることがあります。
また、初診日を証明できない場合には、障害の程度について審査される前に、請求が却下される可能性もあります。
特に注意したいのは、初診日を誤ったまま請求して不支給や却下となった場合、その後の再請求や不服申立てにおいても、初診日の問題が大きな障害となることです。
初診日の証明が難しい場合でも、すぐに諦める必要はありません。
日本年金機構では、初診時の医療機関の証明が得られない場合に、第三者証明や診察券、入院記録、医療機関・薬局の領収書、健康保険の給付記録などを用いて初診日を確認する方法を案内しています。
また、2番目以降の医療機関の記録などを含め、提出された資料を総合的に判断して初診日が認められる場合もあります。
重要なのは、証明が難しいからといって、別の日を初診日にするのではなく、正しい初診日を確認するために、利用できる資料や証明方法を検討することです。
7.当事務所が初診日の確認を重視する理由
香取社会保険労務士事務所では、障害年金の請求に当たり、初診日の確認を非常に重視しています。
当事務所では、次の方針を徹底しています。
① 初診日を意図的にずらすことは一切しません
障害厚生年金を受給したいという理由で、国民年金加入中の初診日を厚生年金加入中に変更するようなことはいたしません。
② 社会的治癒は、十分なヒアリングを行って判断します
通院していない期間があるというだけで社会的治癒を主張することはありません。治療状況、就労状況、日常生活の実態などを丁寧に確認し、社会保険労務士として判断します。
③ 初診日を裏付ける資料を確認します
受診状況等証明書だけでなく、診察券、お薬手帳、領収書、過去の診療記録など、初診日を確認できる資料を検討します。
④ 受給の可能性だけでなく、リスクも正直にお伝えします
初診日や保険料納付要件に問題がある場合には、そのリスクを隠さずに説明します。安易に「受給できます」とお約束することはありません。
私たちが目指しているのは、単に障害年金を受給することではありません。正しい事実に基づき、安心して年金を受け続けられるよう、適切な請求をサポートすることです。
8.まとめ|初診日は自分で決めず、まずは専門家にご相談ください
障害年金の初診日は、受給できる年金の種類や保険料納付要件、障害認定日などに関わる非常に重要なものです。
初診日を意図的にずらしたり、厚生年金加入期間に合わせたりすることは、適切な請求とはいえません。事実と異なる申立ては、不正受給につながるおそれもあります。
一方で、社会的治癒や初診日の証明が難しいケースなど、専門的な判断が必要となる場合もあります。
「最初に受診した病院が分からない」
「初診日の証明が取れない」
「国民年金の期間に初診日があるが、現在は厚生年金に加入している」
「以前に通院していたが、長期間症状が落ち着いていた」
「社会的治癒に該当する可能性があるか知りたい」
このようなお悩みがある方は、ご自身だけで初診日を判断せず、まずは障害年金を専門とする社会保険労務士にご相談ください。
当事務所では、事実関係を丁寧に確認し、適切な初診日と請求方法を検討いたします。
初診日は、受給しやすい日を選ぶものではありません。正しい初診日を確認することが、障害年金請求の第一歩です。
香取社会保険労務士事務所
運営元:香取社会保険労務士事務所
所在地:青森県弘前市東城北三丁目1番地8
電話:0172-55-7882
全国対応。障害年金の初診日確認、社会的治癒の判断、受診状況等証明書の取得、病歴・就労状況等申立書の作成など、障害年金の請求をサポートいたします。
※障害年金の受給可否は、初診日、保険料納付要件、障害の状態などにより個別に判断されます。ご相談いただいた場合でも、受給を保証するものではありません。
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